中国報道:大学入試戦争
中国の受験シーズンは6月、ちょうど今。
これを書いている時期にはもう終わっているでしょう。
この時期は例年メディアも騒々しくなります。
やれ今の教育制度はどうとか、やれこんな苦学生がいるとか。
この流れは恐らくずっと昔の科挙制度があった頃から続いているんでしょう。
優秀であれば出自を問わないというのは当時としては画期的。
とはいえ現実的には、勉強を続けられるほどの財力がなければ不可能だったわけで。
狭き門だったことは変わりないようです。
・大学入試戦争
2014.06.04 21:29:54
//slide.news.sina.com.cn/z/slide_1_33131_61266.html#p=1
5:40 起床
5:50-6:05 朝の体操
6:10-7:00 朝の自習時間
6:50 三年生の朝食時間
7:00 一・二年生の朝食時間
7:50-12:00 午前の授業
12:40~14:40 昼休み
14:50-18:00 午後の授業
18:50-22:30 夜の補習授業と自習
22:35 消灯就寝……
これは河南省汝南高校の全在校生の夏季通常作息时间(註:仕事と休憩の時間)だ。
この時間割は、教師と学生にとって緊張感と規則正しいリズムの中で進む。
起床、朝の体操、食事、授業、トイレ、就寝、多くの学生は常に駆け足状態である。
高考(註:全国大学統一試験)は、既に現代中国で最も「深入人心(註:心情に深く入り込む)」社会の光景となっている。
近来、高考受検者数は下降傾向にあるとはいえ、每年の受検者数は依然として1000万ほどで、ヨーロッパの中レベルの国の総人口と同じくらいだ。
高考、まるで旷日持久(註:時間を無駄に費やして長引く)な「戦争」のようなもので、学生をその渦に巻き込み、家庭を引きずり込み、社会に影響を与え続けている、一年また一年と……
全国人口第一の省である河南は、高校生の数が全国でも同様に一二を数え、2014年の受験者数は72.4万に達した。
河南の高校と高校生もより重たいプレッシャーを長いあいだ背負っている。
汝南は、河南省南部に位置する悠久の歴史を持ち、文化がきらめく千年の古い県である。
汝南高校は建てられて既に百年を越える古くからの重点学校で、かつては多くのエリート人材を育み、輝いた。
学習の雰囲気は濃く、学生は自然と本の山に頭をうずめる。
汝南高校の設置環境、教学管理等の様々な方面における学生のために創造した学習条件、学習の雰囲気や鼓舞激励する仕組みからは学校や教師たちの賢明さや苦心がはっきりと見て取れる。
テスト毎のランキング表彰や学校の大小の幕が掛けられ、教室や寝室、廊下、壁等さまざまな場所にはスローガンや决心书(註:決意表明を書いた紙)、挑战书(註:コンテストや勝負をするための参加者を募る紙)、检讨书(註:始末書)等、戦場にいるかのような感覚を人に与える。
「头可断、血可流,坐断板凳最风流(註:「首を刎ねられても、血が流れても構わない。椅子を座りつぶすのが最も風流である」、元は「头可断、血可流,工不可复」という抗日関係の言葉)」
「只要学不死,就往死里学(註:勉強して死ななければ、死ぬまで勉強するまで)」
これらあたかも残酷で悲壮な言葉は学生の机の上に貼られている。
学生たちにはどうやら「もしまじめに勉強しなければ、恥ずべきこと!」と見えているようだ
二人の学生の作息
2014年5月、正午の校庭はとても静かで、住校生(註:寮生)は全員教室内で昼休みを過ごすよう要求され、三年生の教学棟はどのクラスも学生が机についている。
高考が近づくと、学生たちは一分一秒を争うように多くの者がみな本を広げ、眠くなったらそのまま机に突っ伏して少し休憩をする。
张贝贝が所属する文科487班の教室は大きく、クラスには100名以上の学生がいる。
昼休み時は、学校や教師の厳しい管理と学生の自覚のもと、教室内は静まり返り、数名の学生が一斉にページをめくる動作だけが動きらしい動きだ。
张贝贝は耳を塞ぎ休んでおり、彼女たちのクラスの多くの学生はみな耳を塞いでいて、主には暗記や寝るときに使い、お互いの干渉を防いでいる。
高考まであと20日ほど、三年生は二日に一度のペースで模擬テストを受け、よく休むことよく勉強することは教師と学生にとって同等に重要視されている。
実際のところ、時間割以外で、緊張がないときは存在しない。
高考のプレッシャーのもと、死にもの狂いで苦学することは往々にして资源(註:資源)や出路(註:活路、出口、進路)に恵まれない学生たちには最も直接的な戦い方である。
502班の学生である陈军峰は理科が全校トップの成績だがこのように懸命になるかもしれない。
成績も彼に「开小灶」という「特別待遇」をもたらす。
陈军峰ともう一人ほかのルームメイトは特別に学校の校史馆の中の資料室に寝泊まりすることを許されているが、それは彼らのような「尖子生」に対して、邪魔を受けずにより多くの勉強時間を与えるためである。
高考がより近づき、時間もより少なくなると、陈军峰は毎晩0時頃まで勉強し、そして487教室では、张贝贝もまた最後の一人になるまで残っていた。
自强の自强(註:努力すること)
学生は苦学し、教師は教学に勤しむ。
一種強烈な競争の雰囲気の中、各クラス、各教師、各学生が皆あたかも切磋琢磨しているようだ。
556班は高二のクラスだが、学生たちの勉強に打ち込む姿は受験間近の高三のクラスにも引けを取らない。
クラス担任の万金彪が紹介するに、高考のために三年間努力する子どもたちの刻苦勉励の勉強精神には常々感動させられるとのことだ。
これら農村より来ている多くの子どもたちは、高考が人生や運命を変える最大のチャンスだと考えている。
尹自强は、556班で最も成績が良さそうな学生である。
実家が汝南県余店郷李楼村尹湾村にある彼は、あまり裕福でなく不幸な家庭に育ち、胃癌を患った母が家中のあらゆる財産を使い果たし、最終的には彼らを捨てて出ていったことから、自强を進学させるために、父は一人で生活の重荷を背負い、家内で铝合金(註:ジュラルミン)の門や窓を設置する商売をして生活を支えている。
自强が言うには父親はとても疲れているように感じ、商売も大きくなくいが父は誰かに雇われたくないようで、一人で苦しみ、商売はますます上手くいかず、いつも色んな所を駆けずり回っているとのこと。
学校も自强のために每年1500元の贫困优秀学生助学金を申請した。
素直な自强はそのため勉強をより一生懸命に励むようになり、クラスでずっと10位以内を維持している。
しかしバスケが大好きな彼はその最中にボールが当たって鼻骨を折り、以降鼻の気道が塞がれたことによる目まいや頭痛に悩まされ、さらに彼の胃腸も特别よくなく、食事もあまりとれず、普通に通学するのが難しいようだ。
こうした情况で、病身で既に70歳を超える祖母がやむを得ず実家から出てきて学校周辺に部屋を借り自强の世話をすることになった。
2014年5月、二階建ての小さな建物に囲まれた院子、自强と祖母はそこに一間を借りた。
ここに住んでいるのは16世帯、全て子どもの通学の世話をするために借りた人々で、どの家庭にも二人や三人の学生を抱え、全員で40名以上の学生がいる。
「みんな子どものために引っ越してきたんだよ!」
志强の祖母は言う。
十数名の保護者が居住し、毎日買い物や料理、洗濯、時間調整などで子どもの生活の世話をしており、皆のおしゃべりで最も多いのは子どもの勉強と成績の話題だ。
「自强が鼻骨の手術を受けて私が世話をしにやってきてからというもの、体のほうは良くなってきたようで、成績も安定してきました。」
家庭について話すと、自强の祖母は涙を流したが、孫の素直さと向上心には慰められているという。
「私は一生懸命がんばって理想とする大学に受かる、そうして初めて祖母や父、先生や学校の自分に対する配慮に顔向けできるというものです!」
尹自强は言った。
豆豆の涙
2012年春、豆豆は県城高校から駐馬店高校に転校、ずっと良い成績の彼女はより多くの街の優秀な学生が集まる「小班」に振り分けられたが、豆豆の勉強はとても熱心で、目標も大きく、自然と自身に対しても小さからぬプレッシャーをかけている。
高三の最後の学期、学校では毎週模擬テストが行われる。
高考のために皆懸命になり、優秀な学生が集まる学校やクラスでは、豆豆の成績はどうやらずっと彼女が理想とする程度には達していなかったようだ。
「全ては勉強のためだけ、娘には楽しみは全然ないんです。」
子どものことに心を痛める母はどうにかして娘に楽しみを作ってあげたいと考え始めた。
服を買ったり、美味しいものを食べたり、プレゼントを送ったり、高考の前にはこうした努力は情緒不安定の豆豆をリラックスさせることはできず、苦しみ悩む感情はついにふとした刺激で涙として溢れ出た。
四月のテストが終わり、結果が良くなかったため、晩くまで自習してから彼女は自分の部屋に閉じこもり、母と電話で話し、自分は努力しているが理想とする結果が得られないと、家族に対して恥ずかしいと心を悩んでいると、同時に毎日勉強に忙しくて友人と心を通わすこともできず孤独や失望感を感じると泣いて訴えた……
五月、高考は冲刺(註:ラストスパート)の段階に突入、教育養成組織が行う全国有名教師による高考へ向けての文、理、総合押题串讲(註:傾向と対策を教える)イベントが鄭州で行われ、豆豆はこの二日間限りの4800元の試験前補習に参加、多くの保護者や子どもと同様にすべての頑張りを経た後に、彼らはこうした高額の教師による「点石成金(註:平凡なものに手を加えて立派なものにする)」にこれで高考に受かるのではという一縷の希望を寄せるのだ……
电子竞技(註:サイバーゲーム)チャンピオンの夢
李映彤、駐馬店高校518班の学生、彼は天资聪颖(註:生まれつき聡明)な子どもで、以前は全市电子竞技チャンピオンとして駐馬店を代表して全省の「电竞」大会に参加したことがある。
多くの人の目に映るゲーム少年とは少し異なり、李映彤は勉強に対してもより熱心である。
「电子竞技は主に中学生の時にやってましたけど、高校に入ってからは忙しくて、遊ぶ時間が無くなって、時々みんなとこの辺の大会に参加するくらいです。」
李映彤は言った。
李映彤も今年は高考に参加するが、彼が言うには英語があまりよくなく、それにこだわらず、自分の強みにしぼって勉強しており、そのため、彼はある塾の高考対策クラスに参加することにしたそうだ。
毎日午後授業が終わると、彼は学校の向かいにあるビルで塾の教師と一対一で数学の補習を受ける。
「決して費用は安くないし、両親も普通の人ですが、両親は私を応援してくれていますから、高考のために自分は邁進するだけ、一生懸命にやるだけです」
李映彤はこのように考えている。
安心して勉強するため、李映彤はいつも自分の家の古い離れに住み、朝食と夕食は外で済ませ、昼食の時だけ母が営む烟酒店で一家そろって食事をする。
李映彤はそうした家族から暖かく穏やかな時間を与えてもらっていると感じている。
彼はもともと遊び好きで、両親はそれに心配し、とりわけ父は彼の学習に対して心から配慮していた。
「見てください、小学生の時に使っていた教科書、父が大切に取っておいてるんですよ」
李映彤の家で、彼は部屋の四隅に積まれている本を指さして言った。
我々は一緒に手を動かし、彼が高校で使った本や資料を積んでいくと、なんと天井にまで達した。
目的意識、集中力、そして忍耐力が李映彤にはあり特に際立っている。
「2013年の高考まであと276日、2014年の高考まであと641日……」
彼が高二になったその日から、李映彤は自身のQQネームを高考までのカウントダウンに変え、毎日更新し、高考の時まで欠かさないつもりだ。
「毎日朝起きてまず最初にすることは日にちを新しくすることです」
李映彤にとって、何かをやり続けることは自分に自信や力を与えてくれることであり、高校に通い、大学を受験することはその過程であり、疲れても我慢し、やり抜いてこそ勝利が待っているのだと!
「今、私の最大の夢は高考までやりぬいて、以前のゲーム仲間とまたゲームをして、スカッとすることです!」
李映彤はQQで友人たちと熱く語っていた、待ってろよと……
以下、この記事に対する反応
高考は完全なる一発勝負。
成績が悪ければ自分が興味がない専門に振り分けられる可能性もあります。
それをけるのは自由ですが、妥協する人も結構います。
まあ勿論、才能と好き嫌いが一致するわけでもないのでそれがいい結果になる場合もあるとは思いますが。
いろいろとドラマは毎年生まれますね。
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